先日、観劇させていただいた観世流シテ方 能楽師 武田文志さんの「文の会・屋島」。
その舞台で間狂言【奈須與市語(那須与一語り)】で四役を演じられた野村萬斎さんの
主演作が観たくなり、映画『花戦さ』(日本・2017年)を鑑賞。
戦国の世、豊臣秀吉と華道家元・初代池坊専好の伝説に着想を得た時代劇です。
野村萬斎さんが専好を演じています。
織田信長亡きあと、天下を手中に収めた秀吉の圧政が人々を苦しめ、
専好の友であった千利休も自害に追い込まれます。
そんな秀吉に対して専好は、力ではなく花の美しさで戦に挑むのです。
物語の中でも特に印象的だったのが、秀吉と千利休の色彩感覚のズレが感じられる場面。
茶人の利休は「わび、さび」を尊び、
利休鼠と呼ばれる灰色を始め、黒の茶碗など低明度、低彩度の色彩を好みました。
一方、時代の統治者である秀吉は、
華麗な色彩を好み、茶室を金で覆いつくすと利休に伝えます。
利休は金の良さも認めていると同時に「わび、さび」の色の美しさも知っています。
秀吉の金ピカ以外を認めようとしない色彩は、利休の美学とはかけ離れており、
作中の利休は苦悩を隠せませんでした。
地味な色の中に洒落さを求める「粋(いき)」を感じ取る色彩感覚は、
権力や権威を象徴する絶対的な「金」の世界だけもこだわっているうちは、
辿り着けない境地なのかもしれません…・
ちょうど「茶の本」(岡倉天心・1906(明治39)年)を読み終えたあとだけに、
じわじわと響くものがありました